大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)605号 判決

被告人 伊藤弘充

〔抄 録〕

按ずるに前に禁錮以上の刑に処せられ判決当時執行猶予期間中の者であつてもその者が刑法第二十五条ノ二第一項の規定により保護観察に付せられており判決を受けるべき犯罪をその期間内に犯したものである限り、更にその言い渡すべき判決において再度の執行猶予の恩典を与えることのできないことは同法第二十五条第二項但書の規定するところである。本件において原判決は被告人に対し同法第二十五条第二十五条ノ二を適用して懲役一年に処しその刑の執行を裁判確定の日から三年間猶予するとともに被告人を保護観察に付する旨の言渡をしているのである。しかしながら被告人については当審において取り調べた昭和三十一年八月十日付判決謄本及び昭和三十二年五月二十四日付東京保護観察所長大坪与一の東京高等検察庁検事曾我部正実宛の回答書の各記載に徴せば昭和三十一年八月十日東京簡易裁判所において、窃盗未遂罪により懲役一年に処しその刑の執行を五年間猶予する、右期間中被告人を保護観察に付する旨の判決を言い渡された前科があり現に右保護観察中でその仮解除の事実はないことが明かである。それ故被告人に対しては冒頭に述べたとおり再度の執行猶予の恩典を与え保護観察に付する判決をすることはできない筋合であるから、原判決は右前科の事実を看過したか或は前記法条の解釈を誤つたかそのいずれかに基因して法令の適用を誤つたものと認めざるを得ない。そしてこの違法は判決に影響を及ぼすことの明らかなものであるから原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。

(大塚 渡辺辰 江碕)

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